粉塵、オイルミスト、熱環境からパソコンを護る防塵ラックまもる君シリーズ

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-上級編.1- 防塵ラック熱対策機器の選定基準

当社では各熱機器の能力について、防塵ラックのカタログやホームページの仕様欄で選定の目安となるデータを公開していますが、自分でも計算してみたいとか、計算式の根拠となっている事柄を知りたいという方の為に、簡単にご紹介していきたいと思います。但し、計算結果は机上計算値ですので、あくまでも目安として評価をお願いします。計算式に入らない要素として、直射日光や高温となる装置が近い等ラック表面からの侵入熱があります。また、風通しの悪い場所に置かれた場合、計算要素でもあるラック表面からの排熱効果が得られない事もあります。設置環境を考慮して、余裕のある機種選定をお願いします。

 

ファンタイプ

収納機器許容発熱量の求め方

=(軸流ファンの最大風量×ファンの数÷2×20+熱通過率×ラックの表面積)
×(ラック内部の許容最高温度-最高外気温度)

 

PS-171F(50Hz地域の場合)
=(2.5㎥/m×2個÷2×20+5.6W/㎡k×4.736㎡)×(35℃―30℃)=382.6W

これに収納する機器の稼働率で除算します。サーバーの場合100%、パソコンの場合70%のように機器によって稼働率の値が異なります。PS-171Fに収納する機器はパソコンとなりますので、383W÷70%=547Wとなります。カタログやホームページの収納機器許容発熱量はこうして計算されています。

それでは、次にひとつひとつの要素について解説したいと思います。

軸流ファンの最大風量は、ファンメーカーの製品毎に仕様が設定されています。まもる君で使用している主な軸流ファンは最大風量2.5/2.9㎥/m(50/60Hz)の製品です。50Hz地域でご利用の場合は2.5、60Hz地域でご利用の場合は2.9で計算してください。また、海外へ輸出される場合、異電圧のファンをご利用になるかと思いますが、最大風量が上記の値に近い製品をご選定ください。

風量が小さい場合、放熱能力が落ちます。風量が大きい場合、吸引力が強くなり、粉塵の侵入量が増加する事につながります。

ファンの数は、まもる君のシリーズによって異なりますので、仕様をご確認の上、正しい値で計算してください。

 

 最大風量(50/60Hz)

ファンの数

 Standard、Wide

 2.5/2.9㎥/min

 2 

 DisplayBox、HardwareBox

 2.5/2.9㎥/min

 1

 Light48

 2.5/2.9㎥/min

 1〜4

 atFeet

 2.0/1.9㎥/min

 2

 Server

 2.5/2.9㎥/min

 6

 

係数2と係数20について説明します。係数2の方はファンの最大風量と個数を掛けた値を半分にするための係数です。その理由は除塵フィルターや搭載機器等により空気の流れが減衰して効率が半減するでしょうという事です。係数20の方は専門的な勉強をしないと理解できませんが、空気を排熱の媒体としているため、空気比重、空気比熱の計算、更に軸流ファンの風量㎥/minを㎥/secに変換するための単位換算値を含めた計算の結果となります。

熱通過率は、一般的にスチール製ラックの場合5~6W/㎡kとされており、当社では5.6W/㎡kと定め、すべての製品の計算時に使用しています。盤用熱関連機器工業会やキャビネット工業会では5W/㎡kを採用しています。より安全率を高めた結果を求められる方は5W/㎡kで計算してみても良いでしょう。ちなみに、ステンレス製ラックの熱通過率は4.5W/㎡kとなります。

ラックの表面積は、純粋にラックの表面積を計算すれば良いのですが、1つだけ注意点があります。熱は上昇する性質のため、ラックの底面を放熱面として計算に入れないということです。底面を除いた5面の面積の総和を算出します。各ラックの外形寸法を元に計算してみてください。上記のPS-171Fの場合、W600×H1750×D700ミリと表示されています。高さ1750ミリの中にはキャスターの高さ85ミリが含まれていますので、当社で計算する際には、メーカーの良心としてキャスター分をマイナスして計算しています。実際の計算は次の通りです。

0.6×1.66×2+1.66×0.7×2+0.6×0.7×1=4.736㎡

ラック内部の許容最高温度と最高外気温度は、温度差を求めるために必要な要素となります。ラック内部の許容最高温度は、搭載する機器の取扱説明書等から使用周囲温度を確認し、搭載機器の中で最も使用周囲温度の上限が低い機器の値を抽出します。一般的なパソコンでは10℃~35℃、FAパソコンでは5℃~40℃、液晶モニターでは0℃~35℃、UPSでは0℃~40℃とした場合、35℃がラック内部で許容される最高温度となります。最高外気温度は、防塵ラックを設置される場所の最高温度を確認する必要があります。夏場はクーラーが効いていて、それほど暑くならないとか、熱源の付近に置かざるを得ないので、1年を通じて外気温度が高いというケースもありますので、実地調査が一番確実です。当社で推奨する最高外気温度は30℃以内です。FAパソコンのみ収納で内部温度が40℃までOKという場合は、最高外気温度が35℃となっても問題ありませんが、いずれにせよ想定される搭載機器の使用周囲温度の上限値よりも外部温度が低くなるよう設置場所をご検討ください。

ファンタイプ=ラック内部の許容温度>外気温度です。

これで必要な要素と計算の手順がご理解いただけたかと思いますので、収納機器許容発熱量の計算に挑戦してみてください。外気温度が25℃だったら、どの程度の機器が搭載可能になるのか。Light48シリーズで、外気温度が32℃の時にはファンを何個にすれば良いのだろう等、放熱の目安がご自分で計算できるようになり、いろいろなシミュレーションが可能になります。

 

熱交換器タイプ

収納機器許容発熱量の求め方

=(熱交換器の能力×熱交換器の数+熱通過率×ラックの表面積)×(ラック内部の許容最高温度-最高外気温度)

 

PS-171H(50Hz地域の場合)
=(15W/K×1個+5.6W/㎡k×4.736㎡)×(35℃―28℃)
=290.7W

これに収納する機器の稼働率(パソコンは70%)で除算する事で、カタログの仕様と同じ値が算出されます。

291÷70%=416W

計算式の要素については、ファンタイプの解説欄でご確認ください。ここでは、熱交換器タイプ固有の内容について説明したいと思います。

まもる君シリーズで使用している熱交換器は2機種のみです。

 

熱交換器の能力(50/60Hz)

数量

Light48(H450タイプ)

10/12W/K

1

上記以外のまもる君シリーズ

15/18W/K

1

 

熱交換器タイプでは、防塵ラック設置場所の推奨外気温度を28℃としています。これは、ラック内の空気と外部の空気を入れ替えない為、防塵性能が飛躍的に向上する分、放熱効率が落ちるためです。よく、能力の大きい熱交換器に変更すれば、収納機器の許容発熱量も大きくできるのではとお問い合わせをいただきますが、ある一定以上の温度差を解消できない為、コストパフォーマンスが悪くなってしまいます。発熱量の少ないパソコン(100W)を搭載して実際に実験をしたことがありますが、外気温度に対してファンタイプで1~2℃、熱交換器タイプで3℃高い温度が限界点でした。熱交換器自体は1℃の内外温度差で熱交換を始めるのですが、そのサイクルがゆっくりの為、能力をフルに発揮している状態ではありません。熱交換器メーカーの推奨温度差は⊿T=20℃となっていますので、できる限り、設置環境温度が低い場所での採用をお願いします。

 

クーラータイプ

ファンや熱交換器のタイプは内部の熱を外部へ排出する為に、外部温度が内部温度よりも低いことが大前提でしたが、このクーラータイプは、その大前提が必要ありません。炉などの発熱体付近(40℃以内)でもご利用いただくことが可能となります。また、外部温度は常温だが、搭載機器の発熱量が大きいという場合にもクーラータイプで冷却するという使い方があります。それぞれに計算方法が異なりますので、順番に説明したいと思います。

収納機器許容発熱量の求め方(外部温度が高い場合、40℃以内)

=クーラーの能力―熱通過率×ラックの表面積×(最高外気温度-ラック内部の許容最高温度)

 

PS-171C-01E/-02E(50/60Hz地域の場合)
=500W-5.6W/㎡k×4.736㎡×(40℃―35℃)
=367.4W

パソコンの稼働率70%で除算すると、367W÷70%=524Wになります。

ここでのポイントは、計算式の下線部の値がラック内への侵入熱となり、クーラーの冷却能力を落としている点です。その為、クーラーの能力から引き算となっています。

当社のカタログやホームページでは、こちらの計算式の結果が採用されています。

 

収納機器許容発熱量の求め方(外部温度が低い場合)

=クーラーの能力+熱通過率×ラックの表面積×(ラック内部の許容最高温度-最高外気温度)

 

PS-171C-01E/-02E(50/60Hz地域の場合)
=500W+5.6W/㎡k×4.736㎡×(35℃―30℃)
=632.6W

 

パソコンの稼働率70%で除算すると、633W÷70%=904Wですし、サーバーの場合は稼働率が100%ですから、633÷100%=633Wに相当する機器の発熱に対応する事ができます。

こちらでは、計算式の下線部の値がラック内からの排熱となり、クーラーの冷却能力を手助けしています。その為、クーラーの能力への足し算となっています。

まもる君で採用しているクーラーの能力一覧

 

クーラーの能力(50/60Hz)

数量

Light48
(フロン)

500/600W

1

DisplayBox、HardwareBox
(ノンフロン ノンドレン)

500W

1

Standard
(ノンフロン ノンドレン)

500W

1

Wide
(ノンフロン ノンドレン)

800W

1

Server Mサイズ
(ノンフロン ノンドレン)

800W

1

Server Lサイズ
(ノンフロン ノンドレン)

1300W

1

 

ヒーターユニット

冷凍・冷蔵倉庫前室や寒冷地などでは、朝一番のパソコンへの電源投入が一回で上手くいくように、防塵ラック内にヒーターを入れてパソコンに快適な温度環境を整えています。ここでは、ヒーターの容量計算について解説したいと思います。

ヒーター容量の求め方

≒(ラック内部の許容最低温度-最低外部温度)×熱通過率×ラックの表面積

 

PS-171Hにヒーターユニットを追加(50Hz地域の場合)
≒(10℃―0℃)×5.6W/㎡k×4.736㎡
≒265W

 

まもる君のヒーターユニットは、1台で200Wの容量となるため、上記計算結果の場合は、2個使いをお勧めしています。

ヒーター特有の要素について説明します。

ラック内部の許容最低温度は、ファンタイプのところで説明した各機器の使用周囲温度の低い方の温度を抽出します。10℃~35℃のパソコンであれば10℃になります。10℃以下では問題が発生する場合があるため、ラック内を常に10℃以上にヒーターによって保ちます。

最低外部温度は、設置場所の最低気温になります。ラック内部の許容最低温度と最低外部温度の差が大きくなると、ラック内部の熱が外部へ逃げてしまいますので、排熱量よりも発熱量を大きくする必要があります。ヒーターを複数台投入する他、収納機器の電源を落とさないという方法も有効な手段のひとつです。

ヒーターユニットを追加される場合は、熱交換器連動タイプかクーラータイプとの併用をお勧めいたします。また、常時低温の現場では、放熱機器を搭載しないブランクタイプにヒーターを追加する仕様もご用意していますので、是非、ご相談ください。

主な機器の稼働率一覧

 

稼働率

パソコン

70%

サーバー

100%

UPS

20%

プリンター

都度

 

単位変換係数

おおよその変換係数です。正確な値をお求めの場合は参考となりませんので、単位変換サイト等でご確認ください。

W

100W

1倍

kJ/h

360kJ/h

3.6倍

kcal/h

86kcal/h

0.86倍

BTU/h

341BTU/h

3.41倍